妊娠中、気をつけたい感染症
母子感染を知っていますか?
何らかの微生物(細菌、ウイルスなど)がお母さんから赤ちゃんに感染することを「母子感染」と言います。
妊娠前から元々その微生物を持っているお母さん(キャリアと言います)もいれば、妊娠中に感染するお母さんもいます。
「母子感染」は、感染時期と感染経路によって以下の3つに分類されます。
(1)胎内感染・・・赤ちゃんがお腹の中で感染する
(2)産道感染・・・分娩が始まって産道を通る時に感染する
(3)母乳感染・・・母乳によって感染する
妊婦健康診査で検査が行われるものもあるので、きちんと受診しましょう。
もし、検査で感染症が見つかった場合には、赤ちゃんへの感染や将来の発症を防ぐための治療、保健指導等が行われます。
気をつけたい感染症
風しんウイルス
妊娠初期に感染し、胎児に感染すると、白内障、先天性心疾患、難聴などの障害がある赤ちゃんが生まれることがあります。風しん抗体検査を受けて免疫がない場合は、風しんにかかっている可能性のある人との接触は可能な限り避けましょう。また、免疫のない家族には、予防接種を受けてもらうようにしましょう。
妊娠を希望する女性等への風しん抗体検査について
茨城県では、妊娠を希望する女性、その配偶者や同居家族に対し、無料で検査を受けることができる制度があります。詳しくは茨城県ホームページをご参照ください。
妊娠を希望する女性等への風しん抗体検査について(茨城県ホームページ)
https://www.pref.ibaraki.jp/hokenfukushi/yobo/kiki/yobo/kansen/idwr/information/huushin/documents/huushin-koutaikensa.html
麻しんウイルス
妊娠中に感染し、胎児に感染すると、流産や早産の原因になることがあります。地域で麻しんの流行がみられた場合は、なるべく外出を控えるなど、感染しないように注意しましょう。
水痘・帯状疱疹ウイルス
水痘(水疱瘡)や帯状疱疹の原因となるウイルスです。ほとんどの人が免疫を持っており、妊婦が発症することはまれです。しかし、妊婦が水痘を発症すると、水痘肺炎を発症する危険があります。また、分娩時に水痘を発症した場合は、新生児に感染する確率が高いと言われています。
梅毒トレポネーマ
梅毒の原因となる細菌です。妊娠中に感染し、胎児に感染すると流産や早産、死産の原因となることがあります。また、治療を受けていない場合などに、赤ちゃんの神経や骨などに異常をきたす先天性梅毒を発症することがあります。
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)
エイズの原因となるウイルスです。母親が感染している場合、胎盤や産道、母乳を介して赤ちゃんに感染する可能性がありますが、適切な母子感染予防対策を行うことにより母子感染率を低下させることができます。
B型肝炎ウイルス
赤ちゃんに感染しても多くは無症状ですが、まれに、乳児期に重い肝炎を起こすことがあります。将来肝炎、肝硬変、肝がんになることがあります。妊婦がB型肝炎ウイルスを持っている場合、生まれてきた赤ちゃんにワクチンを接種することで感染を予防します。
C型肝炎ウイルス
赤ちゃんに感染しても多くは無症状ですが、将来肝炎、肝硬変、肝がんになることがあります。
HTLV-1(ヒトT型細胞白血病ウイルス1型)
赤ちゃんに感染しても多くは無症状です。一部の人がATL(白血病の一種で中高年以降に発症)や、HAM(神経疾患)を発症することがあります。主に母乳から赤ちゃんに感染します。授乳方法によってHTLV-1感染の可能性を低くすることがわかっています。授乳方法については医師ともよく相談しましょう。
クラミジア・トラコマチス
性器クラミジア感染症の原因となる細菌です。性行為によって感染します。女性の場合は無症状の人が多いので、妊娠中の検査で気づくことが多いようです。妊娠中に感染し、胎児に感染すると、流産や早産の原因になることがあります。また、出産時に新生児に感染し、肺炎や結膜炎を発症することもあります。
単純ヘルペスウイルス1型及び2型
性器ヘルペスウイルス感染症の原因となるウイルスです。単純ヘルペスウイルスの感染によって、性器やその周辺に水疱や、潰瘍が出現しますが、自覚症状がない場合もあります。無症状でも、性器の粘膜や分泌液中にウイルスが存在すると感染します。一度感染すると、神経節に潜伏し、再発を繰り返します。出産時に産道でウイルスが増殖すると、新生児ヘルペスを発症する可能性があり、帝王切開が必要な場合もあります。
B群溶血性レンサ球菌
赤ちゃんに肺炎、髄膜炎、敗血症などの重度感染症を起こすことがあります。
サイトメガロウイルス
サイトメガロウイルス感染症の原因となるウイルスです。子どもの唾液や尿に多く含まれています。成人の半数以上がすでに感染し、免疫を持っていますが、胎児に感染すると流産や死産、生まれてから難聴や脳の障害などを発症することがあります。妊娠中、子どもの唾液や尿に触れたときは、よく手を洗いましょう。また、子どもと食器や歯ブラシを共有したり、子どもの食べ残しを食べたりすることは避けましょう。
ヒトパルボウイルスB19
ヒトパルボウイルスB19感染症(伝染性紅斑:りんご病)の原因となるウイルスです。妊娠中に胎児に感染すると、胎児水腫、流産や死産の原因になることがあります。地域で伝染性紅斑(りんご病)の流行がみられた場合は、なるべく外出を控えるなど、感染しないように注意しましょう。
トキソプラズマ
トキソプラズマ症の原因となる原虫です。加熱が不十分な肉を食べたり、猫のフンやフンに汚染された土に手を触れた手を介して感染します。妊娠中に初めて感染した場合、胎児に感染すると流産や死産の原因になったり、脳や目に障害のある赤ちゃんが生まれることがあります。妊娠中は肉は十分加熱し、ユッケ、馬刺し、生ハム、サラミ、生乳等の飲食を避けましょう。ガーデニングや畑仕事をするとき、猫のフンを取り扱うときは手袋をつけ、終わったら流水で十分手を洗いましょう。
リステリア
リステリア症の原因となる細菌です。妊娠中に感染し、胎児に感染すると、流産や早産、死産の原因となることがあります。リステリア菌は、食品を介して感染し、塩分にも強く、冷蔵庫でも繁殖しますが加熱することで予防できます。加熱殺菌していないナチュラルチーズ、肉や魚のパテ、生ハム、スモークサーモン等は避けましょう。
赤ちゃんとお母さんの感染症予防対策5カ条
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関連リンク
妊娠と感染症(こども家庭庁ホームページ)
https://www.cfa.go.jp/policies/boshihoken/kansen
母子感染(国立健康危機管理研究機構ホームページ)
https://id-info.jihs.go.jp/diseases/route/maternal/index.html
感染症情報(厚生労働省ホームページ)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/index.html