環境も、アクセスもいいところへ。

水戸から那珂市へ向かう国道349号線を10分ほど。那珂市の入口、中台の大きな交差点のすぐそばに、山下さん夫妻が営むヘアサロン「albico（アルビコ）」はあります。真っ白なキューブ型の店舗はシンプルでありながら、ドアや窓枠にアクセントとなる黒を、ファサードやベンチなど所々にウッドを用いるなど、スタイリッシュな中にもどこかやさしい雰囲気。店内もシンプルに同じトーンで品よくまとめられ、オーナーのセンスのよさを感じさせる空間です。サロンに入る時の気分を高揚させてくれるのは、店の佇まいとインテリアデザイン、そしておもてなしをしてくれるスタイリストさんの印象ですが、出迎えてくれた山下さん夫妻の笑顔が爽やかで、これまたお洒落なお二人なのです。聞けば、いろいろ素敵なこのお店は2019年7月にオープン。以前はご主人の出身地である大阪府堺市でお二人は暮らしていましたが、そろそろ自分たちの店を構えたいと考えていた頃、奥さまが二人目のおめでたに。これを機に独立をしようと、奥さまの実家がある常陸大宮市に近く、集客がありそうな立地と子育てにいい環境の地を探し求め、この那珂市へ。ご主人の寛仁さんにその時のことを振り返っていただきました。「ずっと大阪で暮らし、一時は東京でも働いていました。が、やはり子どもを育て暮らしていくことを考えたら、都会である必要はないかなと。それで、最初は水戸のあたりを探していましたが、ちょうどこの場所があることを知りました。ここは水戸からすぐ近く、東海やひたちなかからもアクセスがいいので、周辺からの集客も充分見込める。それがここを選んだポイントです」

家は離れていても、こころは近く。

「それに、」と奥さまの千秋さんが続けます。「店舗兼住宅として考えていましたから。大通りに面していながら、こんな閑静なところはそうないかなと。お客さまが来やすくて、私たちも暮らしやすい理想の立地でした」 実は千秋さんが気にしていたのは、周囲との距離感。以前お二人が大阪のマンションで暮らしていた時のこと。一人目が誕生して間もなく、赤ちゃんの鳴き声や生活音が隣や上下階に響いているのでは？と、いつも気にされていたそうです。「それが結構ストレスで。迷惑だろうと一声謝まろうにも、名前もわからない、どんな人が住んでいるのかもよくわからない。通路ですれ違っても、この人がどこの人なのかわからないから、何も言えなくて」

それが、今やお隣さんといっても、30mほど離れたところが一番近くのご近所さん。そんな一軒家がポツポツと点在しているところです。「もう音で気にかかることはありません。こうして家と家の距離はあっても、こっちの人たちは温かいですね。子どもとお散歩をしていると、見慣れない新参者みたいな扱いはなくて、みなさんいつもやさしく声をかけてくれます」住まいとの距離と、人との距離感は、那珂市ではいい方向に反比例することを、お二人は実感されていました。

ずっとその人らしくいてほしいから。

理想の店と住まいを手にし、お子さんを保育園に預けられるようになってからは奥さまも店に出られるようになりました。二人の素敵なサロンの評判はお客さまづてで広がり、今や多くの固定客を持つように。顧客の心を掴んだのは、お二人の技術とその根本にあるポリシーにあるようです。それは、お客さまの持っている雰囲気を大切にし、そのらしさを品よく大人なスタイルに自然にまとめること。お二人とも特にショートカットには自信があるようで、スキバサミを使うことなく、切りたての感じに見せないナチュラルなスタイルづくりを得意とされています。

さぞかし若者に人気なことでしょう、と寛仁さんに伺うと、「いや、学生や若い方だけでなく、私たちと同じくらいのママ・パパ世代の方や、おじさんおばさんと年齢層はとても広いですよ」と意外な答えが。中には80代のおばあちゃまもここでのカットを楽しみにやって来るのだそう。実はお二人、自分たちの店をつくる時にこんな理想を持っていたと、千秋さんが教えてくれました。「私たちは以前、店舗をいくつも持つ規模のあるサロンに勤めていて、もちろん分業で異動も多かったんです。そうするとお客さまと長く接することができなくて。お客さまにとっても自分のことをわかってくれているスタイリストがいなくなったら残念に思うでしょうし。だから、お客さま一人ひとりとずっと向き合っていける店にしたかったんです」

想いは店名に込められていました。「albico」とはラテン語で「白くする」という意味。寛仁さんに教えていただきました。「十人十色のお客さまのそれぞれの個性を活かすためには、スタイルを整える側のこころが白くなければならないと。いつも私たちがニュートラルでいることで、お客さまのヘアスタイルもこころもナチュラルにすることができると。そんなスタンスでお客さまと末永く向き合っていけるようにしたいですね」