
いぃ那珂暮らしの人々 vol.27
干し芋生産者になる。
新たな人生を自分で開墾する。
松田 健志さん
- 2023 年に西東京市から移住
- 那珂市地域おこし協力隊 新規就農プロジェクト担当

干し芋のポテンシャルを感じ、
農業の道を目指す。
以前は西東京市で工事の施工管理の仕事をしていたという松田健志さん。コロナ禍で建設業界も厳しい状況にあり、新たな道を考えはじめた時、もともと農業に興味があったことを思い出したそうです。
「それで全国の地域おこし協力隊の募集サイトで就農の案内を探していたら、那珂市が“干し芋生産者になりませんか”と呼びかけているのを見つけました。でも、その時はまだ干し芋に興味はなかったんです。それからしばらくして、那珂市をはじめこのあたりの地域では干し芋生産が盛んで、いま干し芋が見直されているというニュースをたまたま目にして。それで興味が湧き、都内で開催されている那珂市の地域おこし協力隊の説明会に参加しました。そこで干し芋を試食したところ、“これだ!”と思いましたね」
説明会で干し芋に出会ったその週末、松田さんは早速茨城へ向かいます。直売所を訪れると、多種多様な干し芋ブランド商品が並べられた売り場に多くのお客さんが賑わい、お土産にしようといくつも買い求めている。それを目の当たりにした松田さんは干し芋の確かな可能性を感じ、那珂市で干し芋農家になるべく、那珂市地域おこし協力隊の新規就農プロジェクトへの参加を決断します。

自主的に一人でさつまいも栽培に挑戦。
松田隊員のミッションは、さつまいも栽培と干し芋製造の技術を習得し、那珂市をPRできる農業者を目指すこと。期間は3年。1年目は市内でも指折りの干し芋生産者として知られる株式会社芋助の助川さん親子のもとで修行。芋栽培と干し芋づくりを実地で学びました。研修プログラムとしては月曜から金曜まででしたが、農業には本来土日などないものと心得て、週末も自主的に畑に立つようにしていたそうです。
「助川さんにいろいろ教えていただいたので、2年目からは自分で畑を探して借り、さつまいも栽培を試しに一人でやってみることに。春に育苗し植え付けて、夏は栽培管理、秋に収穫と一連の流れを経験しました。研修先の芋助さんにはスタッフがたくさんいるので各自の作業負担はそれほどかかりませんが、いつか就農したら一人でやらなくてはなりませんから。作業工程も一人で考え、効率のいいやり方を試行錯誤しました。やってみると結構たいへんで(笑)。その分やりがいもあることもわかりましたよ」
自分に課した一人でのさつまいも栽培のトライアル。その成果は2反歩(20アール)の畑から20kg詰めのコンテナで100箱にもなる量を収穫。無事出荷までできました。品質もまずまずで、助川さんからも上出来と言われたそうです。
「芋づくりは土を整えるのが基本なんです。おそらく、お借りした畑の地力がそもそも良かったのでしょう。それに助川さんから教わった有機堆肥をしっかり施しましたから。加えて情報収集のために別の生産者さんのところでアドバイスいただいた緑肥を混ぜたのも良かったのだと思います」

積極的に動くことで、
ヒントを得られ、人との繋がりもできる。
就農に向けて研修にはないプログラムを自分なりに考え、実行する松田さん。アグレッシブに行動することで、開けるものがあると語ります。
「畑を借りに相談した時も、地主さんは私の就農への本気度を感じてくれたのでしょう。新たな農業の担い手が増えることに期待いただき、喜んで貸していただけた。しかも無償ですよ。本当にありがたいことです。他の生産者さんのところにもあちこち顔をだして、畑のお手伝いをさせてもらうんですが、そうすることでいろいろアドバイスをいただけます。ある農家さんは私が借りているものより立派なトラクターを気前よく貸してくれたり。やっぱりこちらがただ待っているのではなく、積極的に行動して地域のいろんな農家さんとの繋がりをつくることで、何か得られるものがあるのかなと思いますね」
本格的な就農に向けては、今よりも広い畑やビニールハウス、機材などもいろいろ必要で、クリアしなければいけない課題はたくさんあると笑いながら松田さんは語ります。「そのあたりも、まわりのかたに相談したり調べたりしながら、自分なりに現実的な道を模索していきたいと思います。そしていつか、師匠に並ぶような干し芋生産者になりたいですね」

那珂市地域おこし協力隊
新規就農プロジェクト担当
松田 健志