暮らしのそばに“いぃ那珂キャスト”
Vol.6
本と人をつなぐ、
支えになりたい。
- 図書館運営のサポート
- 地域ボランティア
那珂市立図書館ボランティアのみなさん
地域の人々に、本と過ごす豊かなひとときを提供している那珂市立図書館。ここには職員や司書の方々の他にも、図書館の運営をサポートする役割を自ら進んで担い、ボランティアとして仕事をしているみなさんがいます。
図書館ボランティアには、〈図書修理〉〈環境美化・資料配架〉〈児童サービス〉〈ブックスタート〉〈代読サービス〉〈イベント・広報〉の活動分野があり、それぞれ専門のスタッフが従事しています。今回はそんなボランティアのみなさんの活動をご紹介します。
日々、多くの方が手にし、借りては返すを繰り返される図書館の本たち。利用者のみなさんは大事に読まれているかと思いますが、年月とともにどうしても本には汚れや傷みが出てくるもの。そこで出番になるのが〈図書修理〉のボランティアのみなさんです。
メンバーの林あさ子さんは、図書館新設とともに参加したキャリア15年以上のベテラン。毎週木曜、仲間とともに要修理のコーナーに集められた本たちに向き合いていねいに修理をしています。汚れてしまったものは専用のクリーナーできれいに拭き、ページの綴じが外れかかっているものは糊付けして補修する。中にはページがバラバラになってしまうものもあり、糸と針で縫い合わせる大掛かりな修理をすることもあるようです。
「小さい子は本の扱いがまだきちんとできませんから、絵本はどうしても傷みがち。ちゃんとメンテナンスしてあげないと、次の子が読む時には小さな傷みからさらにひどくなってしまいます」
林さんがこの仕事を始めたのはもともと本が好き、図書館が好きだったから。図書館オープンの際にボランティア募集を知り、自分も何か役に立てればという想いで応募しました。以来、15年以上も修理の仕事を続け、その腕もなかなかのものに。が、中には修理の難しい状態の本に出会うことも。
「これはちょっと直せそうにないかなと思ったものを、なんとか元のような状態に戻せた時は、本当によかったと思います。諦めてしまったら、その本を書いた方にも、その本を待っている方にも申し訳ないですから。夏休みに小・中学生が見学に来ることがあるのですが、修理の体験をしてもらうとみんな楽しいみたいで。そうして修理のことを知ってもらうことで、みんな本をたいせつにしようと思ってくれます。そうして気づいてくれることもうれしいですね」
ボランティアの〈環境美化・資料配架〉グループで、配架の活動をしている石井イツさんも、図書館ができた当初から15年以上も続けているベテランの一人。返却された本を元の書架に戻す活動をしています。
那珂市立図書館では月平均約2万6千点という膨大な数の資料が貸出・返却されており、日々の配架は職員の方だけでは大変なもの。石井さんらボランティアの専門スタッフの力がどうしても必要なのです。配架の活動は決まった活動日を設けておらず、それぞれが空いている時にいつでも参加できるシステム。でも、石井さんはなるべく図書館の利用が集中する土日や祝日に来るようにしているそうです。「やっぱり週末に返却される本がドカッとたまるんです。それを早く元の書架に戻してあげないと、次に借りたい人が困りますからね」
石井さんがこの活動を始めたのは、ある知り合いからの一言。「子育ても落ち着いて、これからの生き方を考えたら、人を相手にする活動で社会と繋がることがいいんじゃないかって言われて。それで私は本が好きだったこともあって、この活動を始めることにしたんです。配架はこの広い図書館を行ったり来たりして結構歩くんですよ。棚の上に下に収めるのも、腕を伸ばしたりかがんだりで体をいろいろ動かすから本当にいい運動になるんです。みなさんの役に立てて、自分の健康にもなる。一石二鳥でしょ(笑)」
石井さんはこの活動をしてから、読む本の幅も広がったそうです。那珂市立図書館では子ども向けのおはなし会を開催しており、〈児童サービス〉のボランティアが絵本や紙芝居などの読み聞かせをしています。おはなし会は月4回の開催で、グループに分かれて交代で担当。スタッフの一人、稲田淑子さんは13年前からこのボランティアに所属し、毎月子どもたちを楽しませています。
会にやってくるのは、2歳くらいから小学校低学年の子たち。その時に集まった子どもたちの年齢に応じて稲田さんはおすすめの本をセレクトしています。いかに話に興味をもって聞いてもらえるか、これまで自分なりに読み方を工夫してきたそうです。「例えば、登場人物がラララン〜ロロロン〜と楽しそうにしている一文は、地の文と同じ口調ではなく、そこだけ弾むように楽しく読んだり、フレーズを繰り返してみたり。その本の作家さんがその場面で表現したい想いをちゃんと汲んで声にしてあげることがたいせつだと思っています」
もともと本が好き。そして子どもが好きと語る稲田さん。孫の誕生日に孫自身を主人公にしたお話をつくってプレゼントしたり、ふだんから孫との会話の中からファンタジーのお話を即興で創作してみたり。そんな好きなことを活かして始めたのが図書館での活動。これまで数多くの子どもたちが稲田さんの読み聞かせに夢中になってきたことでしょう。
那珂市では2014年からブックスタート事業が展開されています。これはすべての赤ちゃんのまわりで楽しくあたたかいひとときが持たれるようにと、赤ちゃんに絵本をプレゼントし、絵本と初めて出会う体験を保護者とともに感じてもらうものです。総合保健福祉センター「ひだまり」で行われる生後4~5か月児の乳児健康相談の際に、図書館ボランティアの〈ブックスタート〉担当のみなさんが、赤ちゃんに読み聞かせをしています。
笠島努さんは、1年ほど前に知人に誘われこのボランティアに参加。当初は赤ちゃんにどう読み聞かせしたらいいか戸惑いもありましたが、これまでの経験を活かして今では堂々とできるようになったとか。というのも笠島さんはもともと人と本をつなぐ地域のサークルに所属し、子どもたちに本の読み聞かせや落語を披露していたそうです。
「これまでも子どもたちに読み聞かせをして楽しいひとときをつくりたい、そんな想いで自分自身が面白がって活動をしていました。そうして子どもや親御さん、地域の人たちとつながることが楽しくて。だからブックスタートに誘われた時も迷わず引き受けました。この活動は、もちろん赤ちゃんに読むものですが、その赤ちゃんを抱っこしているお母さんとお父さんに声をかけるたいせつな機会だと私は思っています」
初めて子をもつ親御さんは、産後4~5か月の頃は心に余裕がなくなってくることも。笠島さんは絵本の読み聞かせが終わると、お母さんとお父さんに声をかけて、いろいろ話を聞いては自身の経験談を交え話をし、最後には「大丈夫だよ」という一言を伝えているそうです。
「なんでもない会話かもしれませんが、それでほんの少しでも心が軽くなってくれたらと思って。このまちに赤ちゃんを連れてきてくれたのは、あなたたちのおかげ。ありがとうっていう想いで親御さんたちに接しています」
図書館ボランティアのみなさんに共通しているのは、誰かのために何か少しでも役に立てれば、という想い。この広々とした静かな図書館には多くの本だけではない、そうしたあたたかい人の心も集まっています。
図書館ボランティア
那珂市立図書館茨城県那珂市菅谷2995-1 那珂市立図書館ではボランティアとして