いぃ那珂暮らしの人々 vol.20

趣味を楽しむ広い土地を求め那珂市へ。

「ラムってこんなに旨いのか!」「ジンギスカンのイメージが変わった!」。那珂市額田に、お客さんの多くを驚かせる“生ラム”のジンギスカンのお店「羊小屋」があります。ここは2020年8月に菊池さんご夫婦が始めたお店なのですが、その美味しい話の前に、菊池さんが店を開くことになった経緯が面白いのでちょっと紹介させてください。以前は日立市で暮らしていたという菊池さん。根っからのクルマ好きで、特にHONDAの2シーターの軽自動車「BEAT」をこよなく愛するかなりのマニアだとか。20代の頃から日立製作所で勤め、国家資格の電子機器組立て技能士を取得しエンジニアとして長年活躍。その経験を活かし、自身が惚れ込むBEATのECU(車の動きを制御するコンピュータ)を専門に修理するビジネスを始めようと50代で起業しました。「ECUは古くなると必ず液漏れして基板が腐食するので、修理が要るんです。BEATのファンは全国にいて、依頼されてもう5000台近くは修理しましたね。それでも中には手放したい人もいて。BEATのオーナーズクラブの会長もしてましたから、私のところなら大事に使ってくれるだろうと、口コミでたくさん集まってきちゃうんです」 そうして送られてきたBEAT10数台と、自分が好きで集めた車が7台ほど。それらの置き場所にも困り、そろそろのんびりしたところで暮らそうとも考えていたので、移住をすることに。たまたま那珂市で、閑静な環境で土地の広さも充分な物件が見つかり引っ越すことに。さあ、ここに大きなガレージを建てて車いじりを思う存分楽しもう。そうするつもりでした。

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趣味の場所は、新たな趣味の店に。

2019年の夏のある日、ご夫婦で新宿のジンギスカン店「だるまや」に行ったときのことです。菊池さんはもともと羊肉を好まなかったそうですが、奥様とこの店の大将が旧知の仲ということもあり、半分は付き合いのつもりで席に着いたのでした。 「今まで食べたジンギスカンは硬くて臭みがありましたから。正直好きではなかったんですが、一口食べて衝撃を受けましたね。“生ラム”はこんなに旨いのかと」

「だるまや」では豪州産の生ラムをチルドで仕入れ、定番のジンギスカンをはじめ、ブロックのまま焼いて角切りにして供するものやハンバーグを看板にしています。菊池さんもそのコースで生ラムの柔らかさと味わいに感動。ハンバーグを口にして完全に魅了されました。「もうハマっちゃって。結構足を運びましたよ。でも何度も行くのも大変だと思っていたら、大将が『じゃあ自分でお店をやったら?』と言ってくれて」。気っ風のいい大将の計らいで暖簾分けをするような形で、ここ那珂市で店を出すことにしました。

これからの人生を謳歌しようとガレージにするはずだったスペースは、こうしてお店に変更。生ラムのみ、しかもチルドのまま仕入れて提供するジンギスカン店を、結婚記念日の月に合わせ、2020年2月にオープンしました。調理経験のある奥様が独自のタレを試行錯誤して開発し、仕込みと調理を担当。炭起こしと肉焼きはご主人という役割分担。こうして二人の新たな生活が始まりました。「一度も凍らせることなく、焼いても柔らかな生ラムの魅力。これをぜひ知ってほしいと思って。私が驚いた時と同じリアクションを見るのが、いま楽しくて仕方がないんです」

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食べたい人のために営業し、あとは遊ぶ。

さて、そこで疑問が。そんなに美味しい生ラムなら、水戸あたりで昼も夜も大々的に営業したら話題になって、いい商売になるのでは? 聞けば、オープンの際に宣伝はほとんどしなかったそうですが。「いや、この店は自分たちの趣味ですから。売上が目的じゃないんです。私たちが自信をもっておすすめするものを食べたい人にだけ提供し、堪能してもらう。それで充分なんです」。9人の席数も菊池さんが丁寧に肉を焼いて供するのにはそれが限度。完全予約制にして予約がない日はお休みにするのも「しょっちゅう営業していたら、他の遊びができなくなっちゃいますからね」。というのも、菊池さんの本業は依然BEATのコンピュータ修理。昼間に修理して、夕方から夜に店の営業、時には夜中から朝方まで修理の続きをすることも。そして、休みの日は専ら仲間とサーキットへ行き、愛車を心ゆくまで走らせる。そんな充実した生活を楽しんでいます。だから、この店はちょうどいい規模と営業スタイルなのだそうです。

そういえば、お持ちの車は合わせて20台近くと聞きましたが、ここには5-6台しかありませんね?

「額田駅の近くにいい更地がありましてね。安く買えたので残りはそこに置いています。コンテナをもってきて車の道具だとかいろいろ入れて、秘密基地みたいに仲間と一緒に車を楽しむ場所にしているんです。そうですね、これからは好きな車をちょろちょろ直して暮らしていきたいですね。そこのハチロクのレビンも7万kmいってますがバリッとレストアしてあげて乗ってみたいなと。そうそう、最近ドイツのメッサーシュミット、1950年代につくられたあの三輪でキャノピー開けて乗るやつです。あれを購入しまして、この店の前に置きたいと思ってるんです。あとはBEATがこれだけあるから全部キレイにして、レンタカーでも始めたらその魅力も伝えられて面白いんじゃないかなと…」

趣味に生きる菊池さんの話は、なかなか尽きることがありません。

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炭火焼き 生ラム ジンギスカン「羊小屋」

那珂市額田南郷2352-1
TEL.029-212-4741(完全予約制/前日までに電話予約)

http://hitsujigoya.com/

営業時間 17:00 ~ 22:00くらいまで 不定休

菊池さんの本業はこちら

BEAT-GARAGE

http://www.beat-garage.com/