暮らしのそばに“いぃ那珂キャスト”

Vol.5

森と人のために
貢献できることをずっと。

  • 森林保全と散策路などの整備
  • 地域ボランティア

なか自然の会

駅前のようす

緑が多い那珂市でも、ここ北西部の瓜連丘陵は広大な森林が広がり、豊かな自然を愉しめる場所として知られています。周囲には白鳥が飛来する古徳沼をはじめ、常陸二ノ宮として古くから信仰を集める静神社や、戦国時代にこの地を治めた古徳氏が築いた城の跡、桜田門外の変に加わった水戸浪士の斎藤監物の墓など、見どころも多いことから、休日にはこの一帯を散策しに多くの人が訪れます。

これらのスポットを結ぶ静古徳古道や森林の散策路は、今でこそハイカーが森林浴を楽しみながら通れるようになっていますが、それも「なか自然の会」のみなさんが地道に整備してくれたからこそ。ボランティアで地域の人々のために活動を続ける「なか自然の会」の会長、岡村光雄さんにお話を伺いました。

このあたりはずいぶん広大な森林が広がっていますね。ここに散策路をつくったのはどのような経緯があったのでしょう?

「私たちは、2011年に茨城県全域で森林整備の活動を行う『いばらき森林クラブ』の那珂支部としてスタートし、2014年に現在の会として事業を始めました。はじめは手入れがされていなかったこの辺りの市有林で枝打ちや間伐をして、森を死なせないように手を入れていったんです。そうして自分たちが整備をしていくうちにできた作業道を、地域のみなさんが楽しめる散策路にしようと、仲間とつくっていきました」

現在、散策路は5コースあり、その全長は約6km。10年かけて完成しました。でも、作ってそれで終わり、ということはありません。森は日々生きています。その6kmの散策路を中心に、倒木のおそれがあるものや間伐が必要な箇所は伐採し、陰をつくる余計な枝を落とし、つる草が路を覆えば取り除く。やってくる人たちがいつでも通れるようにと、毎月の整備を欠かしません。

慣れた手つきでチェーンソーを作動させ、樹に刃を入れていく。まわりの仲間が声を掛け合いながら、みんなで注意深く樹を伐採する。倒した樹は細かく切って軽トラの荷台へ。ここで切った木は地域の福祉施設ナザレ園に届け、そこで風呂の薪に使われるそうです。それにしても、みなさんの作業を見ていると、まさに森の職人といった印象。林業を長年やってこられたのでしょうか?

「いやいや、これが本職だったわけじゃなくて。みんな以前の仕事は違いますよ。電気関係に、コンピュータ技師、運送をしていたり、いろいろです。みんなリタイヤ組で、ここでチェーンソーを持ったのは誰もが初めてでしたよ」

聞けば、現在29人のメンバーの平均年齢は67歳くらい。定年退職を迎えた後、この活動を知り賛同した方々で、森林を守りたい、地域に何か貢献したいという想いで集まってくれたそうです。たいへんな作業ですよね、と伺うと岡村会長はにこやかに答えてくれました。

「林業って、よく3Kって言われるでしょ。キツい、きたない、危険だと。でも、私らはこの活動を“3H”だと思ってやっているんです。まず“Health”。森を健やかにすることで、訪れる人が木々に触れ森の空気を吸うことで健康的になれます。二つ目は“Hobby”。子どもたちをはじめ地域のみなさんがここを楽しみにやってくる。それに貢献できることが私らの楽しみです。三つ目は“Honesty”。会としては地域社会のために公正であり、人に自然に誠実であること。そうして、みなさんこの活動に誇りを感じながらやっていますよ」

会の活動はこの辺りの森林の保全、散策路の整備にとどまりません。近隣の小学校で伸びた木の枝を落としたり、古徳沼周辺の環境整備をしたり。他にも、子どもたちが森に親しみ、自然とふれあうイベントをいくつも開いたり、森林保全をサポートしようとする人たちのためにチェーンソー作業の講習会を開くなど、年間を通して実にさまざまな活動を展開しています。自然のために、地域のために、何か貢献できることがあれば。岡村会長をはじめ29人のメンバー一人ひとりの胸にあるのはそんな想いです。

取材も終盤、あるメンバーの方にお話を伺おうとしたところ、「もうすぐ子どもらが下校する時間だから帰らないと。横断歩道で交通安全の旗を持つアレですよ、じゃあスミマセン」と足早に森を後にしていきました。

なか自然の会

事務局
茨城県那珂市平野1800-395