いぃ那珂くらし檜山さん6

いぃ那珂暮らしの人々 vol.16

手作りの店で、手作りのパンを、ご夫婦で。

手作りの店で、手作りのパンを、ご夫婦で。

JR 水郡線額田駅の脇にある静かな林。ここは久慈川によってつくられた段丘崖で、木々の向こうには広大な水田地帯が広がっています。踏切のあたりから、車一台がようやく通れる林沿いの小道を進んでいくと、数軒の集落が見えてきました。2 軒目の右手にある古い瓦屋根の建物が、酒井さんご夫婦の営むパン屋「Peco ぱん」です。大きなセンダンの樹に守られるようにして構えるその店は、昔ながらの農村部にあるような味わい深い佇まい。季節の草花がさりげなく飾られる素朴さのなかに、可愛らしい暖簾が目を引きます。
 ここは奥様の美保さんの実家で、隣にある物置だった家屋をお二人で手作りしてリノベーション。自分たちでできることはやろうと2年ほどかけて完成。2017 年に開業しました。
 「もともとパン屋をやりたいなと思っていて。各地を旅して暮らしていましたが、その夢を叶えようと起業の勉強をし、パン屋で修行していました」
 実は美保さん、若い頃から北は北海道、南は屋久島まで日本全国を自転車で旅していました。その途中、バイクで旅をしていた昭さんと鹿児島で出会い、結婚。二人は鹿児島や宮崎で暮らしていましたが、美保さんの夢を叶えるため、またご両親のそばで暮らそうと2015 年に那珂市へ帰郷。昭さんは美保さんをサポートすることを決め、この地で新たな生活を始めました。

シンプルなパンのお店をつくりたくて。

シンプルなパンのお店をつくりたくて。

胚芽パン、リスナッツ、編みパン、豆乳パン、カンパーニュ…。「Pecoぱん」のショーケースには、シンプルなパンが並びます。これは美保さんのこだわりだそう。
 「カレーパンとかおかずメインのパン、スイーツに凝ったものではなくて。素朴な味わいで、食事と一緒に楽しめるシンプルなパンがもともと作りたくて。そういうパン屋さんってあまりないんですよね」
 茨城県産の小麦や生イースト、天然酵母、毎日こねているたねつぎの酵母などを使用して作り出されるパンは20種類くらい。あんこもジャムも身近な食材を使用した手作りのもの。安心して食べられて心と身体が元気になるようなパンを目指しているそうです。
 ちなみに、“Peco”とは美保さんのニックネーム。子どもたちが覚えやすい名前にしようということで「Pecoぱん」に。可愛らしいロゴはご主人のお手製です。

広がるファン。広がる嬉しさ。広がる夢。

広がるファン。広がる嬉しさ。広がる夢。

美保さんは朝、というより夜の2時に起きてパン作り。当初、昭さんは働きながら店の掃除などを手伝っていましたが、美保さん一人で仕込みからパン焼き、店の営業をこなすのは厳しいと、昭さんもこちらを本業にしました。今ではパンの製造は美保さんがメインでこなし、昭さんはジャムやクッキーを作ったり、POP やブログを書いたり、洗い物や配達をしたりという役割分担(取材中まさに昭さんは配達へ行くことに)。それでも毎日の営業は難しく、仕込みもあるので週3日の営業がちょうどよいのだそう。始めて3年、美保さん、夢のパン屋生活はいかがですか?
 「忙しいんですけど…。でもみなさんとても応援してくれて。最初は親戚とか知人がお客さんだったんですけど、次第にいろんな人が来てくれるようになりました。そこの小道を小学生が小銭を握りしめて走って買いにくるんですよ。キュンとします」
 素敵なパン屋さんの噂は口コミであっという間に広がり、今では多くのファンが火・金・土曜日を楽しみにしています。
 「ある女性のお客さんは“ 仕事の前にこのパンを食べるから頑張れる”って言ってくれて。もう、嬉しいですよね」
 夢を叶え、充実した毎日をおくる美保さん。さてこれからはどんなことを考えていらっしゃるのでしょうか?
 「ここのスペースを広げて、主人が挽いたコーヒーと一緒にパンを楽しめるカフェコーナーを作りたいですね。あとは、ここになかなかやって来られない高齢の方向けに、移動販売できるようにしたいなと」
 仕事の合間、ウサギやタヌキが出るという目の前の林を夫婦でのんびり散歩しながら、そんなこれからのことを話しているそうです。

いぃ那珂くらしペコさん4

Peco ぱん

茨城県那珂市額田南郷1346-3
090-1701-8860(予約OK)
https://kaimoana.blog.ss-blog.jp

営業日 火曜・金曜・土曜
営業時間 10:30 ~ 18:00( 売り切れ次第終了)