いぃ那珂くらし檜山さん

いぃ那珂暮らしの人々 vol.15

カナダで芽生えた夢。

カナダで芽生えた夢。

イチゴ栽培農家のお父様の影響があったのでしょうか。ここ那珂市で生まれ育った檜山さんは食への興味から、東京で調理師となり、イタリア・シチリア島で料理を学びます。その後、経験を活かし海外の食品を卸売する企業で営業・プロデュースの仕事をされていました。順風満帆に思えた29 歳のある時、檜山さんはふと思ったそうです。
 「本当にこのままでいいのかなと。一度きりの人生なんだから、やりたいことをやろう。海外で暮らす夢を実現しよう」
 そうしてカナダでワーキングホリデーの生活を始めました。趣味のDJ の腕前が買われ、カナダと日本の国交9 0 周年イベントでDJ を務めるなど、さまざまな経験をし、いろんな人との出会いを重ねていく中で、ある実業家に出会います。
 「その方は、ある土地の有効活用を考えていて。イチゴを作ったらどうかと。カナダもそうですが海外のものは硬くて酸っぱいのが多いんですね。だから私は『ウチ、イチゴ農家なんで、やってみましょう!』と。いろいろ未知数なんですが、自分で貢献できることはやってみたいと思って。それですぐに帰国して、こうしてイチゴ栽培を勉強しているところです」

自然に寄り添う理想の栽培を目指して。

自然に寄り添う理想の栽培を目指して。

 独学でイチゴ栽培の道を歩んできたお父様によれば、「ものにするには十年かかる」そうです。帰国して一年。檜山さん、イチゴ栽培はいかがですか?
 「確かに難しいものがあります。でも、日本の技術は海外にはない素晴らしさがあるので何とか習得したいです。品種改良や生産技術など突き詰めて、美味しいものを目指していくのは、日本人ならではのものがありますから」
 現在、檜山さんはご両親が培ってきた栽培方法を習得中。檜山農園では生態系を守るため、ミツバチによる昔ながらの受粉を行ったり、農薬を極力抑えるためにアブラムシを食べるダニやテントウムシなどを使用したり。極力、自然を活かした栽培を心がけています。そのために、ご両親の他にも、学びたいことがあれば全国各地の農家を訪ね、さまざまな知識・技術を習得しています。
 「私が師匠と崇めている8 0 歳を越えた長崎のある農家さんは、無農薬ですよ! しかも化学合成肥料も一切使わないんです。実はイチゴの甘さというのは肥料によるところが大きくて、有機物を吸い上げるから甘くなるのですが、その師匠のイチゴはまったく自然なピュアな甘さなんです。これを実現するには、葉っぱ一枚一枚を毎日入念にチェックし、手入れを重ねていくこと。もう、イチゴへの愛が半端じゃないんです。作物にかけた愛情は、ちゃんと返ってくるんですよ」
 さらには、化石燃料を使用せず、太陽光・地中熱などを利用した自然エネルギーだけの栽培も考えたいと語る檜山さん。これを実現し、やがてはカナダで日本のイチゴを作ろうと意気込んでいました。

地域の人々と協力して、 みんなで地域の暮らしをよりよくしたい。

地域の人々と協力して、
みんなで地域の暮らしをよりよくしたい。

栽培以外にも檜山さんには考え、取り組んでいることがあります。例えば、イチゴを使用した商品開発。イチゴを丸ごと氷にして削り、生キャラメル練乳をかけたオリジナルかき氷メニューを考案して水戸の駅ビルに営業し、自ら店頭販売したり。カカオ豆からチョコレートを作る“Bean to Bar” のカフェを営む知り合いのもとで、ドライイチゴを使用したバレンタインのワークショップを開いたり。
 「ロスになるイチゴがもったいないですから。商品化すれば収益になります。6次産業化のことも考えていますよ」
 活動はイチゴに関わることだけではありません。料理経験があることから、水戸にある障がい者向け就労支援施設の知人からの依頼で、オフシーズンにはお弁当のメニューを考え、材料調達から調理までをこなしています。
 「施設の人たちと関わって思ったのは、障がいのある方と農業をつなげられないか、ということ。障がいのある方を働き手として役立てることは可能だと思うんです。そこで作った野菜でレストランを開けたらいいですね」
 イチゴの修行を重ねながらも、精力的に活動をする檜山さん。想いが向けられているのはカナダだけではありません。
 「もっと、この地域の人たちと協力して、地域の暮らしをよくしていきたい。もっと活気が出て、みんなの心が少しでも豊かになれたら。そのためにはどんな小さなことでもいい、何か力になれればと思っています」

いぃ那珂くらし檜山さん7

檜山農園

茨城県那珂市戸 7042-1
080-5693-2805