いぃ那珂暮らしの人々 佐々木 典明さん

いぃ那珂暮らしの人々 vol.11

気取らずに蕎麦を楽しめるように。

気取らずに蕎麦を楽しめるように。

一見すると、この辺りには多く残る昔ながらの平屋の民家。よく見ると、玄関には暖簾がかかっています。ここは那珂市後台にある蕎麦屋「五楽亭」。佐々木さんが店を始めたのは2010 年12月のこと。
それまでは県北で清掃関係の仕事をしていたそうですが、那珂市に移り住んでから茨城の蕎麦を味わっていくうちに、自分も蕎麦を打ってみたいという思いが湧き上がってきたそうです。
 「もともと蕎麦が好きで。飲食業の経験もありましたので、いっそ自分で店を開いてみようかと。那珂市は常陸秋蕎麦の産地ですし、プロ志向の人を育ててくれる蕎麦の先生もまわりにいた。あとは、やるだけでしたね」
 手頃な物件も見つかり、昭和の暮らしの薫りが残る佇まいをそのままに、あとは佐々木さんが昔から揃えていた年代物の家具で店をまとめあげました。どこか懐かしさを感じさせる、ほっとするようなお店です。
 「蕎麦はどうしても値段が高くなりがちなんです。ほんの数口すすっただけで千円とか。でも、そうはしたくなかった。気取らない店で、のんびり蕎麦を楽しんでもらえるようにしています」

応援したいみんなの想いを被災地へ。

応援したいみんなの想いを被災地へ。

蕎麦屋の店主・佐々木さんにはもう一つの顔があります。それは被災地支援のボランティア。きっかけは3.11 の震災でした。
 「私の出身地、南三陸の小学校が甚大な被害を受けて。居ても立っても居られなかったんです。エンピツ1本でもノート1冊でも子どもたちとその家族に届けたい。何か支援したいという想いをまわりの人たちに伝えると、みんないろいろ物資を持ってきてくれたんです。
もうこの店がいっぱいになるくらい。それを被災地へ送り届けました」 そうしてさまざまな地域への支援を続けていく中で始まったのが「被災地へ土のう袋を送るプロジェクト」。土のう袋に応援メッセージや絵を描いて、現場で復興作業をする人に届けるものです。このプロジェクトにもまわりの方々から多くの支援が寄せられ、それをもとに土のう袋を購入。近隣の学校の生徒たちに描き込んでもらいました。2015 年、常総市で起きた水害で佐々木さんが土のう袋を運び復旧作業に参加した際、被災者の方々は積み上げられた色とりどりの土のう袋を見て涙を流していたそうです。
 「被災のニュースを見て多くの人が“何かしたいけど何をすればいいのかわからない”と言います。でも励ましたい、応援したい、その想いはこうして伝えることができるんです」
 はじめは近隣に呼びかけたプロジェクトも今や全国に広がり、多くの賛同者が描いた土のう袋や支援が佐々木さんのもとに集まってきます。これまでに九州北部、熊本、鳥取、新潟糸魚川、岩泉など災害が起こるたびに、人々の想いが描かれた土のう袋が被災地で活かされてきました。

やりたいことを、やってるだけ。

やりたいことを、やってるだけ。

佐々木さんのボランティア活動は、故郷の復興支援や土のう袋のプロジェクトにとどまりません。震災支援を通じて知り合った人々の活動に共感し、さまざまなサポートに加わっています。
 「震災の現実、自然環境や学校教育の問題、いろんなことを多くの人に知ってもらい、ともに考えていければと。そんな想いから、いま社会で起こっている現実の問題に追ったさまざまなドキュメンタリー映画を、市内の施設やこの店で上映する活動もしています。
それと、手入れの行き届いていない人工林を皮むき間伐して森を守る〈きらめ樹〉の活動に参加して啓蒙活動をサポートしています。
これはもっと深く関わっていきたいですね」
 ほかにも地域の社会福祉の活動や〈いぃ那珂暮らし応援団〉にも参加するなど、精力的に動き回る日々が続く佐々木さん。こんなに美味しい、ていねいに心を尽くした蕎麦料理を提供しながら、どうしてそんなに動けるのでしょう。
 「そりゃ忙しいですけど、やりたいんだからしょうがない。やりたいからやってるだけです。だから疲れた時が休み。ウチは不定休なんです(笑)」

佐々木 典明さんご夫婦

蕎麦 五楽亭

茨城県那珂市後台1250-8
TEL.029-298-6618
営業時間 11:00 ~売切れ次第終了
定休日/不定休
https://www.facebook.com/ 蕎麦五楽亭-424884480965488/

被災地へ土のう袋を送るプロジェクト
https://ja-jp.facebook.com/donouproject/